ジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)についての回想

先日、

 

ブラジルが誇るボサノバ界の巨匠ジョアン・ジルベルト氏が亡くなられました。

 

88歳でした。

 

今回の記事ではその偉大な功績を称えるとともに、一度だけ体験した彼のコンサートの事を書いていきます。

 

 


映画『ジョアン・ジルベルトを探して』予告編

 

まず最初に白状してしまいますが、

 

僕自身、

 

決してボサノバという音楽に詳しいわけではないし、

 

ましてや彼の大ファンというわけではありませんでした。

 

ただ、

 

音楽を深く学ぼうと躍起になっていた20代に、

 

ジャズと並んでボサノバに出会い、

 

「ボサノバ」を聴く=「ジョアン・ジルベルト」を聴く

 

という行為であるとその時の先輩に教えられ、

 

少しずつアルバムを集め聴いていました。

 

そして、

 

(今考えるととても運よく)そのタイミングで

 

ジョアンの来日公演が開催されました。

 

当時、

 

いわゆるロックコンサートしか行ったことのなかった僕には、

 

「ボサノバ」という音楽も、

 

「1万円」というチケット代も、

 

決して低いハードルではありませんでした。

 

しかし、

 

その時既に70歳を超えていたまさに「生けるレジェンド」の生演奏を聴く機会は二度とないかもしれない。

 

そんな謳い文句にのせられ「エイやっ」と半ば気合でチケットを申し込んだのでした。

(そしてそれは本当のことになってしまいました。)

 

 

 

 

2006年、秋。

 

場所は東京国際フォーラム

 

初めて行くその美しい会場に、

 

また周りの如何にも富裕層然とした佇まいの観客に、

 

いささか違和感を覚えながら席に着きました。

 

コンサートの開演時間は17時で、

 

普段行っていた他のものに比べるとかなり早いスタートでした。

 

結局そのうわついた気分を少しも落ち着かせることが出来ずに、

 

やがて17時を迎えました。

 

ですが、

 

ふとみると、会場席はまだ半分以上が開いたまま。

 

多数の観客が隣接された喫茶スペースに腰をおろし、

 

こちらに入ろうともしません。

 

「なぜだろう?」

 

僕がそう不可思議に思っていると、

 

電子音が音階を鳴らし一つのアナウンスが流れました。

 

「申し訳ございません。アーティストがまだ会場に到着しておりません。」

 

と。

 

「えっ?」

 

想定外の事態に僕は慌てました。

 

数年前に流行した北国の女性二人組のように駄々をこねて楽屋から出てこないとかではなく、

 

そもそも会場に来ていないとはどういうことだ?!・・・

 

 

 

しかし、周りに目をやると

 

誰一人として驚いた様子はありませんでした。

 

むしろ笑ってさえいるのです。

 

ますます混乱する僕でしたが、その後

 

「アーティストがホテルを出発しました。」

 

「アーティストが会場に到着しました。」

 

と約30分おきくらいに流れるアナウンスと

 

そのたびに皆が笑ったり歓声を上げ拍手したりする姿を見てようやく悟りました。

 

「なるほど。これは想定されていた事態なのだ」と。

 

そして、

 

開演時間から遅れること約二時間。

 

19時近くになってついに会場が暗転(観客も全員着席)。

 

明るく照らされたステージにあのジョアン・ジルベルトが登場したのです。

 

 

残念ながらこの後の記憶があまりありません。

 

なぜなら、

 

あまりの流麗に紡がれるボッサの調べにあろうことか

 

眠ってしまったからですwww

(深夜アルバイト明けで寝ないまま来ていました。。)

 

1万円を払い、

 

世界最高峰の歌手の歌を聴きながら寝る。

 

とんでもない贅沢な体験でした。

 

 

ゲッツ/ジルベルト

ゲッツ/ジルベルト

 

 ボサノバを聴くことは今も少ないですが、上記のスタン・ゲッツとともに作られたアルバムはとても好きです。

 

ジョアンご本人は気に入ってなかったみたいですけど。。

 

きっと今も空の上で、素敵な音楽を奏でているに違いありません。

 

スタン・ゲッツと仲直りしているといいですね。)